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腎臓病センター 腎臓内科インタビュー

INTERVIEW

腎臓病センター 腎臓内科 診療科長

尾田 高志

[専門領域] 腎臓病 / 慢性糸球体腎炎 / 腎血管炎
/ 感染関連腎炎 / 腎炎と病巣感染症 / 腎移植内科

腎臓病の早期治療により
地域における患者さんのQOLを高めたい

2017年4月に腎臓病センターを設立。腎臓病診療に関連した内科、外科が有機的に繋がる全国でも数少ない腎臓病の総合診療チームです。また東京都三多摩地区において成人の腎移植を行っている唯一の施設であり、腎臓病センターは、血液透析、腹膜透析、腎移植のすべてに対応できる体制を整えています。加えて、臨床研究にも注力しており、特に血管炎や感染関連糸球体腎炎については、臨床と関連したトランスレーショナルな研究にて多くの論文発表実績があります。

IgA腎症などの慢性糸球体腎炎と血管炎における
専門的治療により腎疾患の根治を目指す

当科では、腎臓病を早期の段階で診断し、治療介入を開始することで腎機能の低下を未然に防ぐことに注力しています。
中でも慢性糸球体腎炎の代表であるIgA腎症においては、扁桃摘出術+ステロイドパルス療法を用いた根治的治療を積極的に行っています。

しかしながら、2~3割程度の患者さんにおいては治療後も血尿が消失しない事例が見受けられます。そのような場合は、上咽頭の炎症が疑われるため、当院の耳鼻咽喉科と連携しながら上咽頭擦過療法(EAT)を実施しています。腎臓内科・外科だけではなく、専門的な他科とも迅速に連携できることも当院の大きな特徴・強みです。 IgA腎症と同じく注力している疾患に血管炎があります。血管炎は、血尿がみられる疾患で、腎生検で評価を行った後に、標準的治療となっているステロイドと免疫抑制剤であるリツキシマブを用いた治療を行っていますが、必要に応じて、血漿交換による治療も実施しています。IgA腎症、血管炎の早期治療により、腎機能低下を防ぐことで患者さんのQOL向上に貢献できると考えています。

腎機能の悪化が見られなくても、注目してほしい尿検査

一般的に当科に患者さんをご紹介いただくタイミングは、血液検査の異常、クレアチニン値の悪化が見られた場合が多いですが、IgA腎症においては、尿検査の方が重要となります。腎機能の低下が見られない状態であっても、軽度の蛋白尿と、血尿が見られた時点で診断、治療に繋げることができれば高い割合(8割程度)で根治を期待することができます。しかし、血液検査に異常が出た段階となってしまうと、腎機能低下が進んでいるため根治率は50%以下まで下がってしまいます。尿所見異常、特に血尿が見逃されがちとなることが多く、高血圧、糖尿病の患者さんをフォローされているクリニックの先生方におかれましては、血液検査のみでなく、尿検査にも注目して実施いただければと思います。

慢性腎臓病におけるSGLT2阻害薬の保険適応

慢性腎臓病においては、従来、高血圧の治療薬でもあるレニンアンギオテンシン系阻害剤がその腎保護効果から広く用いられてきましたが、最近では糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬にも腎臓に対する大きな保護的作用が認められ2021年9月より保険適応となりました。
SGLT2阻害薬は有効な治療方法ですが、腎機能障害が高度に進行してしまった症例では使用できず、腎機能が悪化後に使用すると逆に更に悪化させてしまう恐れもあります。そのため、SGLT2阻害薬の適応にも早期の診断が重要となります。早期の診断には血液検査よりもむしろ尿検査が有用です。そのため、少しでも疑いがある患者さんがいらっしゃれば、是非、尿検査を積極的に行っていただく、もしくは早めに当科にご相談いただければと思います。腎機能が悪化していない段階でご紹介いただくことで、患者さんに対して早期からの有効な治療を施せるようになります。

腎移植における内科・外科チームの強力な連携

腎移植における腎臓内科の重要な役割にドナー評価があります。亡くなった方から移植を受ける献腎移植は日本ではまだまだ事例が少なく、大半が健康な人から移植を受ける生体腎移植となります。生体腎移植では、ドナー側は移植後に腎臓がひとつになってしまうため、100%の腎臓機能を保つことができない状態になってしまいます。そのためレシピエントと同様にドナーとなる方の健康管理は大変重要です。最も避けなければいけないことは、ドナーとなられた方が人工透析や腎移植が必要となる事態です。そのため当院では移植が成立するかどうか、の段階から徹底的に評価するようにしており、毎週内科と外科合同で移植に関するカンファレンスを実施しています。

腎移植の生着率は5年間で95%以上と以前に比べ非常に高くなっていますが、生着率が高いといっても、移植後のケアが大切なことは言うまでもありません。高血圧、糖尿病、高脂血症、慢性腎臓病の管理については、私たち内科が得意とする領域ですが、免疫抑制剤の管理となると外科メンバーの方が豊富な経験をもっています。このように必要に応じて内科と外科とが補い合いながら連携できる体制があることで、移植された腎臓が10年そして20年と長持ちするように継続サポートすることができています。

透析患者の動向と地域における当院の役割

腎臓病の早期治療は、透析に移行する患者数の減少に繋がります。以前はIgA腎症から透析に移行する患者数が最も多かったのですが、現在は糖尿病が1位となっており、最近は特に腎硬化症による透析への移行患者数が増加している傾向がみられ、現在、透析への移行原因の第2位となっています。腎炎による透析患者数の減少には、前述したIgA腎症の根治治療が普及した影響が大きいと考えられますが、腎硬化症は、高齢化や血管寿命に密接に関係してくるため、完全に排除することは困難となります。しかしながら昨今、SGLT2阻害薬が慢性腎臓病患者に使用適応されるようになったことで、今後、腎硬化症を起因とする透析患者数の減少も期待できるのではないかと思っています。患者さんの近い立場にいらっしゃる地域の先生方と協力し、患者さんの変化を早期に察知いただき、治療を行える関係を強化していきたいと思っています。

地域の患者さんを当科だけで診ることはできませんので、治療が落ち着かれた患者さんにおかれましては、当院側は一旦終診とさせていただき、地域の先生方にお戻しする逆紹介を推進しています。腎臓病においては、高血圧、糖尿病、高脂血症など生活習慣病のコントロール・管理のサポートが必要不可欠となります。当院の専門的治療、そして地域の先生方による継続的な診療サポートにより、地域の腎臓病で悩まれる患者さんをともに支えていきたいと強く願っておりますので、今後ともご協力よろしくお願い申し上げます。

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