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心臓血管外科インタビュー

INTERVIEW

心臓血管外科 診療科長・教授

赤坂 純逸

[専門領域] 心臓 / 大血管

地域の開業医の先生方と連携し、
早期発見・治療につなげたい

心臓血管外科では、主に狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、心臓弁膜症、心臓腫瘍などのその他の心臓疾患、大動脈解離や大動脈瘤などの大動脈疾患、腎動脈瘤や脾動脈瘤等の内臓動脈瘤および閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤を対象として手術治療を行っています。当科は「質の高い医療」「安心・安全な医療」を心がけています。加えて、術後の生活の質(QOL)を低下させないように低侵襲(低負担)手術を積極的に導入しております。例えば、心拍動下の冠動脈バイパス術、大動脈瘤に対するステントグラフト治療およびステントグラフト治療と通常の手術を組み合わせたハイブリッド手術、閉塞性動脈硬化症に対する血管内治療(EVT)、また、下肢静脈瘤に対するグルー治療など、低侵襲手術に積極的に取り組んでおります。最新の心臓血管外科手術を提供するとともに、他科との連携を綿密にし、すべての患者さんにご満足いただける手術の提供に努めております。

多摩地域の中核病院として患者さんをサポートする体制づくり

当科は、現在6名の医師が在籍しており、すべての医師が心臓血管外科専門医および外科専門医の資格を取得しております。心疾患、大血管疾患、末梢血管疾患それぞれの分野を専門とする医師が担当し、高いレベルでの医療を提供できるよう万全の体制で治療にあたっています。

手術は実年齢ではなく、患者さんの身体の状態(見た目年齢)で判断

高齢者でよくある症状に、息切れ、胸の圧迫感や痛み、易疲労感、ふらつき、めまい、失神、運動困難などがあります。「年のせい」と安易に考えられがちですが、精密検査の結果、狭心症や心臓弁膜症と診断され、手術治療の対象になる場合があります。高齢者では活動量が減少するため症状が出にくく、受診した時にはすでに重篤な状態になっていることがあります。最近息切れが酷いとか疲れやすい、動悸がするなどの症状があれば循環器専門医に相談していただくことをお勧めします。

高齢であるため手術は無理と考えられる方もいると思いますが、当科では実年齢で手術適応の可否を判断するのではなく、患者さんの身体的状態(見た目年齢)や合併症の有無やその重症度で判断しています。90歳以上の方でも2階まで階段を上ったり、庭仕事程度の活動が可能であれば手術に耐えられると判断しております。実際に、昨年は94歳の患者さんが手術を受けられ、元気に自宅退院しております。

合併症を伴うハイリスクな患者さんの受け入れ体制も万全

高齢者であれば、すでに何かしらの合併疾患がある方も多いと考えられます。実際に高血圧、糖尿病、呼吸機能障害、腎機能障害等の複数の合併症があるため、手術は難しいと思われている方もいると思います。当院は、多くの診療科が併設されている総合病院であり、診療科間の垣根が無く、他科との連携もスムーズに取れております。合併症のコントロールを充分に行い、手術が安全に行えるように他科と協力して治療を行っております。例えば、長年の喫煙で呼吸機能が低下していたり、重度の糖尿病で血糖コントロールが不良であったり、以前に脳梗塞の既往があるといった場合には、呼吸器内科、糖尿病代謝科、脳神経内科およびリハビリ科と連携して治療を行っております。

以上のよう合併疾患を持つ患者さんを受け入れる万全な体制が整っていますので、より安心・安全な医療の提供ができます。医療技術の進歩により以前は難しいとされていた患者さんでも手術が可能となるケースが増えており、他の病院で手術が困難とされた場合でもご相談いただければと思います。

循環器内科との連携や救急体制について

当科は、定期的に循環器内科とカンファレンスを行っており、循環器内科から紹介を受けた患者さんに対してどのような手術法を選択したか、術後経過はどのような経過であったかといった情報を共有し、個々の患者さんについて詳細な検討を行っております。また、異なった手術法の選択についても検討し、更なる手術成績の向上を目指しております。

また、東京都で行っている特殊救急事業である、「東京都CCUネットワーク(※1)」や「急性大動脈スーパーネットワーク(※2)」に参加しています。循環器内科と連携して、心血管疾患の救急患者を積極的に受け入れる体制作りを行っております。

※1:東京都CCUネットワーク:急性心筋梗塞を中心とする急性心血管疾患に対し、迅速な救急搬送と専門施設への患者収容を目的とする。
※2:急性大動脈スーパーネットワーク:急性大動脈疾患に対し循環器内科と心臓血管外科が協力して緊急診療体制をとり、効率的に患者受入れを可能とする。

下肢静脈瘤の新しい治療法
『グルー治療(ベナシール治療)』について

最近では、下肢静脈瘤の低侵襲手術として静脈瘤の原因となる伏在静脈を血管内部よりレーザーや高周波を照射して、熱で焼きつぶして閉鎖させてしまう血管内焼灼術が普及しています。更に体の負担が少ない次世代の治療法としてグルー治療が2019年12月に保険適用となりました。当科ではいち早くこの治療を導入しました。

グルー治療は、医療用の瞬間接着剤を静脈内に注入して血管を閉塞させます。瞬間接着剤は一般名をVenaseal(ベナシール)といい、その名からベナシール手術とも言われます。血管内焼灼術とは異なり、熱による血管周囲組織の障害がないことから痛みが少なく、血管周囲の熱損傷を予防するための低濃度大量局所浸潤麻酔(TLA麻酔)を必要としません。手術後直ぐに歩行が可能であり、圧迫ストッキングも必要ありません。加えて、入浴も当日から可能です。また、最大の利点は術後の血栓症リスクが少ないことです。合併症があるために、他院で手術を断られた方もグルー治療で手術可能となるかもしれませんのでご相談ください。

近年、大動脈瘤の新しい治療法として注目を浴びている
「ステントグラフト内挿術」の先駆け的な存在

私自身の専門は大動脈瘤治療です。まだ企業製ステントグラフトが発売されていなかった2000年から自作ステントグラフトを用いて「ステントグラフト内挿術」を開始しました。2008年になり企業製胸部大動脈用ステントグラフトが本邦で保険適応となり、使用可能となりました。現在では胸部大動脈用5種類、腹部大動脈用7種類の企業製ステントグラフトが使用可能です。それぞれのステントグラフトには、特徴があるため、当院では、患者さんの大動脈の形態に合わせた最適なステントグラフトを選択して手術を行っております。

低侵襲心臓手術MICS(ミックス)の導入

高齢化の波の中で、心臓血管外科手術も低侵襲化は必然のことと考えられており、冠動脈バイパス術においては人工心肺装置を用いないオフポンプ冠動脈バイパス術や閉塞性動脈硬化症におけるEVT、大動脈瘤手術におけるステントグラフト治療や下肢静脈瘤におけるグルー治療を既に導入して実施していることは既に述べたとおりです。さらに弁膜症手術に対して、胸骨正中切開を行ず、約5㎝程度の小さな皮膚切開で、肋間を経路して行う低侵襲心臓手術(MICS)の導入を予定しております。従来の手術に比較して切開創の感染リスクが非常に低く、手術後のQOLの低下を抑えることが可能となり、早期退院が可能となります。

また、将来的には大動脈弁狭窄症に対する最新治療であるカテーテルを用いて大動脈弁位に人工弁を挿入するTAVI(タビ)を開始するために循環器内科と協力して準備を進めております。
最新の情報は病院公式ホームページでお知らせいたします。

リハビリの重要性

心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)は、心臓血管外科手術後の患者さんが体力のみならず自信を取り戻し、家庭で生活や社会生活に復帰するための総合的活動プログラムのことです。その内容は、運動療法と学習活動および生活指導やカウンセリングを含む生活相談などが含まれます。関与する職種は医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、栄養士、社会福祉士等と幅広い職種で対応を行っております。当院は心臓リハビリ施設基準Ⅰ(※)を取得しております。また、集中治療室(ICU)、冠動脈治療室(CCU)における早期離床リハビリを取得しております。入院が決定すると同時に心臓リハビリの申し込みを行い、必要であれば術前より介入を行っております。また、ICU・CCU入室後の術後第1病日より心臓リハビリの早期介入を行い、社会復帰に向けたチームリハビリを積極的に実施しております。

(※)厚生労働大臣が定める施設基準であり、訓練室の広さや人員の配置により施設基準ⅠとⅡに分けられています。

地域の開業医の先生方と連携し、早期発見・治療につなげたい

日々、患者さんと接しておられる地域の開業医の先生方と密接に連携し、患者さんの紹介を行う際のハードルを下げたいと思っております。最近、息切れがある、胸部に違和感があるなどといった症状を訴えられたり、心雑音に気づかれた場合には、症状が軽度でも、当院循環器科、心臓血管外科にご相談いただければと思います。「この程度のことで患者さんを紹介してもいいのだろうか?」「些細なことだが相談に乗ってもらえるだろうか?」と迷われることもあるかと思います。ご相談いただければ、治療が必要かどうかを判断し、治療方針を決定してお返事したいと思います。当科で手術が終了し、状態が落ち着きましたら、その後の外来経過観察および内服治療の継続をお願いしたいと思います。術後においても、経過中に状態に変化が御座いましたら当院にご紹介いただければ対応いたします。また、定期的に心エコー検査およびCT検査が必要な場合には当科外来で施行しますので、お気軽にご相談下さい。

今後の課題として心臓リハビリの普及や体制づくり、低侵襲治療についての勉強会や啓蒙活動に取り組んでいけたらと思います。当地域の医療向上に貢献することが当院の使命と考えています。何卒よろしくお願いいたします。

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