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腎臓外科インタビュー

INTERVIEW

腎臓病センター 腎臓外科 診療科長

岩本 整

[専門領域] 腎移植 / 膵移植 / バスキュラーアクセス
/ 腎不全外科 / 一般外科

他科や地域との関わりを
最大限に生かし
腎移植医療の
普及と啓発に取り組む

八王子医療センターは開業当初1980年から腎移植手術を開始し、腎不全の透析治療や合併症治療とともに、腎移植の推進に力を入れてきました。2017年4月には腎臓病の診療にかかわる内科と外科を一つにした腎臓病センターを設立し、他科との連携で腎臓病の治療を総合的にとらえ、迅速かつ安全な医療の提供を目指しています。

全国的にも稀少な
腎臓内科と外科の融合診療

以前から連携していた、腎臓内科、移植外科、人工透析センターの診療体制をさらに強化し、2017年4月から腎臓病センターとして診療を行っています。他施設でも腎臓内科と腎臓外科が一つになった医療機関は存在しますが、当センターはカンファレンスも、病棟も外来も同じとなっており、ここまで有機的に内科と外科が融合しているセンターは全国的にも非常に少ないと思います。初期の蛋白尿から末期腎不全の血液透析、腹膜透析、腎移植に至るまで、一貫して効率よい診療ができる体制は当院の大きな特徴の一つだと言えます。

特に、腎臓外科として力を入れているのは、腎移植、腎不全の外科治療である内シャント、透析患者さんが行う血管手術、腹膜透析カテーテルの挿入と、そのトラブルシューティングです。さらに数は少ないのですが膵臓移植実施施設として、膵臓移植もテリトリーに入っています。シャントの手術は年間200件超、シャントの血管内治療は年間約300件と多くの実績を有しています。

腎代替療法の中で腎不全を根治させる唯一の治療法である腎移植において、当院は40年以上前の歴史があり、現在660を超える豊富な症例を有しています。年間では30例ほどあり、2020年においては全国で11位、都内では3番目に多い治療実績を有しています。また多摩地域における唯一の成人腎移植実施施設であり、専任の移植コーディネーターが常駐し、腎移植希望患者さんの組織適合性検査を行うHLA検査センターを完備している国内でも有数の移植医療施設です。

医療技術の向上により
腎移植の一年生着率は98%

移植の技術は年々進んでいます。手術自体の技術力が上がったこともありますが、移植に伴う拒絶反応を予防するための免疫抑制療法が目覚ましく進歩しています。免疫抑制剤は1980年代にシクロスポリンが登場し、それに続くさまざまな薬剤の開発により移植の生着率が劇的に向上し、短期的な成功率は98%以上、10年後でも80%以上と高い数値を維持しています。

生体腎移植でも献腎移植でも腎臓を移植することで、患者さんの生活の質は大きく改善します。移植された腎臓がたとえ1つであっても通常の70%の腎機能に置換され、透析治療をしなくても普通の生活が送れるようになります。さらに透析患者さんと比べて死亡リスクは10分の1、平均余命を伸ばせるということが実証され、論文としても発表されています。更に、非血縁者間で血液型が異なっても移植成績が良好なことから、最近では夫婦間での腎移植も増えつつあります。ただ、日本の透析患者数は約34万人、2019年の腎移植数は2,057例(献腎移植は230例、生体腎移植は1,827例)ですから、わが国の腎移植数は世界と比べ決して多いとは言えない状況でもあります。

腎移植における早期説明の重要性

腎移植は、家族から提供される生体腎移植と亡くなられた方から提供される献腎移植の2つに分けられます。本来ならば健康な人から腎臓を移植する生体腎移植よりも献腎移植の方が倫理的に望ましく、推進されるべきだと思います。ただ、献腎移植を希望して登録されている方は約1万3,000人と、提供数をはるかに超えているため、成人の場合登録してから15年待ちというような状態です。そのため、国内の腎移植は生体腎移植が9割、献腎移植は1割と大半が生体腎移植となります。生体腎移植をすることが必ずしもベストな選択ではないかもしれませんが、日本で移植を希望する場合、はじめは生体腎移植を検討し、家族からの提供が難しい場合、献腎移植に登録するという流れが現実的な進め方となります。生体腎移植は健康な人にメスを入れることでしか成り立たない医療であり、当然そこには高いハードルがあります。ご本人はもちろんのこと、ご家族にも移植に対する理解を深めて頂くことが非常に重要となります。

加えて、腎移植では説明のタイミングも重要となります。移植、血液透析、腹膜透析、3つの代表的な腎代替療法のうち、特に早期説明が必要になるのが腎移植です。と申しますのも、腎移植は検査に非常に時間を要するだけでなく、前述した通りドナーを依頼するため、ご家族に理解を得るにも多くの時間を要します。ご家族からのご提供が望めない場合、献賢移植に登録することになりますが、登録には慢性腎臓病でCKDG5の手前のG4から登録できるため情報を知れば、早く登録できる可能性があります。そのため早い段階で適切な説明を行うことが治療選択の可能性を広がることになります。
しかしながら、早期に腎移植が患者さんに案内されることがまだまだ少ない現状があります。非移植施設のスタッフから移植に対する認識が曖昧なため、躊躇してしまう、説明を行う適切なタイミングがわからない。といったお声もよく伺います。腎臓の専門医であっても、実際に移植を経験することは稀なため、移植に対する認識が曖昧になることは致し方ないことだと思います。腎移植に関する適切な説明を行うことも、当センターの重要な役割となりますので、少しでも移植治療の可能性を感じられた場合は、お気軽に当センターにご相談頂ければと思います。

当センターでは、患者さんとご家族に、全ての治療の選択肢を提示し、移植が可能かどうか、移植した際のメリットとデメリットをきちんと説明し、十分にご理解いただいた上で自らの意思で移植を希望された場合にのみ移植手術を適応しています。今後の人生を左右する非常に重要な話となりますので、説明には相当な時間を要します。今の医療制度では説明だけでは診療報酬がつきませんので、説明人員の確保は、コスト面、マンパワーの面どちらにおいても、それ相当の覚悟が必要ですが、腎代替療法の正しい知識を伝え患者さんの治療の選択肢を増やすことも、私たちの存在意義があるととらえていますので、今後も積極的に相談を受け入れていきたいと思っています。2022年1月からは、現行のセカンドオピニオン診療という形をとり、距離を問わず移植相談して頂けるようにオンライン診療を開始しました。

地域全体で腎臓病患者を支える
医療体制の構築を目指す

透析治療は2日に1回血管に針を刺すため、時には出血等のトラブルが起こることがあります。トラブルによって透析ができなくなると患者さんは生命に関わりますので、迅速な対応が必要となります。当院は24時間365日対応できる入院施設や合併症が起きた時にも総合病院として他の診療科と連携や複合的な診療体制が整えています。万が一のトラブルなど、いざという時にも安心していただける救急体制を今後も維持していきます。

腎移植された患者さんにおいては、移植後の血圧、コレステロール、尿酸等の内科的な管理が非常に大切となります。日頃の細かなフォローを継続するには、近隣医療機関のご協力が必要不可欠になります。近隣医療機関の皆さまと共に、地域の腎臓病患者さんを支えることができる体制を構築のために、当院ではご紹介いただいて終わりではなく、積極的な逆紹介を推進しています。

移植の知識を広げ
移植医療の可能性を高める

医療者が移植について生きた知識が得られる機会はまだまだ少ないです。当センターでは地域の腎臓内科や透析施設の看護師さん、技師さんに対して、腎移植についての勉強会を定期的に実施しています。地域における勉強会のニーズは高く、勉強会では「移植の年齢のタイミングは?」「患者さんが妊娠を考えている場合は?」「どのタイミングで移植について紹介をしたらいいのか?」など、具体的な質問が飛び交い、出席者の方は熱心に耳を傾けていますので、ご興味がある方は是非ご参加ください。

移植についてはじめは腎臓外科が対応することが多いですが、実際に移植を進めるとなると、検査など内科医の対応範囲が多くあります。そのため最近は、内科の若い先生の腎移植の知識を向上してもらい、内科医としての裾野を広げてもらうことを目的に、他大学の腎臓内科医の研修の受け入れも開始しました。その他にも、私個人としては、移植施設が少ない地域における腎移植医療立ち上げに力を注いでいます。1例として、旭川医科大学の腎移植医療立ち上げの技術支援を行いました。

医療者だけではなく、臓器提供における啓発キャンペーンも定期的に実施する等、これからも移植医療の普及及び啓発活動に取り組み、腎移植の可能性を広げていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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